なぜ塗料は劣化するのか?(紫外線編)
塗装の耐候性(屋外での劣化しにくさ)は、主成分である「樹脂」の化学的な強さに依存します。
一般的に、アクリル < ウレタン < シリコン < フッ素 の順で耐候性が高くなりますが、その根拠は分子レベルの「結合エネルギー」の差にあります。
1. 樹脂別・耐候性の比較
耐候性が高いほど、太陽光(紫外線)や雨風による樹脂の分解が遅く、光沢や色の維持期間が長くなります。
2. 耐候性の根拠:結合エネルギーの科学
塗装が劣化する最大の原因は、太陽光に含まれる**紫外線(UV)**のエネルギーです。地表に届く紫外線のエネルギーは約 410 kJ/mol とされています。
樹脂を構成する「原子同士の結びつき(結合エネルギー)」がこの数値を超えていれば劣化しにくく、下回っていれば破壊されます。
• C-C 結合(約347 kJ/mol)
• アクリルやウレタンの主骨格。紫外線のエネルギー(410 kJ/mol)に負けてしまうため、時間が経つと結合が切れて粉を吹く「チョーキング現象」が起きます。
• Si-O 結合(約444 kJ/mol)
• シリコン樹脂の主骨格。紫外線のエネルギーを上回っているため、光による分解が起こりにくく、長く光沢を保てます。
• C-F 結合(約485 kJ/mol)
• フッ素樹脂の主骨格。地球上に存在する化学結合の中でトップクラスの強さを誇ります。紫外線のエネルギーではびくともしないため、20年近い超耐候性を実現します。
3. その他の補助的な要因
樹脂の強さ以外にも、以下の要素が耐候性を補強しています。
• ラジカル制御技術: 劣化の引き金となる物質(ラジカル)を抑制する添加剤を含ませることで、シリコン級の価格でフッ素に近い耐久性を出す塗料も登場しています。
• 親水性: シリコンやフッ素は汚れが付きにくく、雨で汚れが流れ落ちる「セルフクリーニング機能」を持つものが多いため、塗膜の摩耗を防ぐ効果があります。






