外壁塗装見積もり完全解剖ガイド

第1章:見積もりの全体構造と費用の黄金比
まず、見積もり総額がどのように構成されているかを知ることが重要です。一般的な適正見積もりは、以下の4つの要素で構成されています。
- 材料費(約20%): 塗料、シーリング材、養生シートなど。
- 足場代(約20%): 足場の設置・解体、飛散防止ネット。
- 人件費(約30%): 職人の手間賃(塗装、洗浄、補修)。
- 利益・経費(約30%): 業者の運営費、保険、車両費、現場管理費。
【重要】 極端に安い見積もりは、この中の「人件費(=工程)」を削るか、「材料費(=塗料のグレードや塗布量)」をごまかすことでしか実現できません。

第2章:項目別・詳細内訳解説
見積書に記載される各項目の詳細な意味と、チェックすべきポイントを解説します。
1. 仮設工事(足場・養生)
塗装の品質と安全を左右する土台です。
- 仮設足場(Kasetsu Ashiba)
- 内容: 職人が作業するための足場を組みます。現在は「ビケ足場(くさび緊結式)」が主流です。単管足場(パイプのみ)は危険で作業効率が悪いため、推奨されません。
- 単位: ㎡(架面積)
- 詳細チェック: 家の外周の長さ+0.6m~1m程度の幅を持たせて計算します。「延床面積」ではなく「足場架面積」で計算されているか確認してください。
- 飛散防止ネット(Mesh Sheet)
- 内容: 塗料や洗浄水が近隣へ飛び散るのを防ぐメッシュシートです。
- 単位: ㎡
- 詳細チェック: 足場と同じ面積分が必要です。これが含まれていないと、近隣トラブルの元になります。

2. 下地調整・高圧洗浄
塗装の寿命は「塗る前」のこの工程で8割決まります。
- 高圧洗浄(Kouatsu Senjo)
- 内容: カビ、苔、古い塗膜、チョーキング(粉)を12~15MPaの高圧水流で洗い流します。
- 種類:
- 通常洗浄: 水のみでの洗浄。
- バイオ洗浄: 特殊な薬品を使い、根の深いカビや苔を死滅させます。コケがひどい北面などに有効ですが、費用は高くなります。
- 重要: 洗浄後、完全に乾燥させるために丸1日(24時間以上)空ける必要があります。
- 養生(Yojo)
- 内容: 窓、玄関、エアコン室外機、植物、地面など、塗料が付着してはいけない場所をビニールやテープで覆います。
- 重要: 養生の美しさは職人の腕に比例します。雑な養生は、仕上がりのラインのガタつきに直結します。
- 下地補修(Shiji Shori)
- クラック補修: ひび割れ(クラック)を埋めます。
- ヘアクラック(幅0.3mm未満): 刷り込み等で対応。
- 構造クラック(幅0.3mm以上): Vカット工法(ひび割れをあえて削って広げ、シーリング材を充填する)などの本格的な補修が必要です。
- クラック補修: ひび割れ(クラック)を埋めます。

3. シーリング工事(コーキング)
サイディング外壁の場合、最も重要な項目の一つです。
- 打ち替え(Uchikae)
- 内容: 既存の古いゴム(シーリング)をカッターで完全に撤去し、新しいものを充填します。
- 適用: 目地(ボードとボードの間)。基本的に目地は「打ち替え」が必須です。
- 増し打ち(Mashiuchi)
- 内容: 既存のシーリングの上から新しいものを被せます。
- 適用: 窓やドアのサッシ周り。サッシ周りはカッターを入れると防水シートを傷つけるリスクがあるため、増し打ちが一般的です。
- 注意: 目地を「増し打ち」で見積もる業者は手抜きの可能性があります(すぐに剥がれるため)。

4. 外壁塗装(本体)
基本は「3度塗り(下塗り・中塗り・上塗り)」です。
- 下塗り(Shita-nuri)
- 役割: 接着剤の役割。外壁材と上塗り塗料を密着させます。壁の状態によって吸い込み止め機能や、微細なひび割れを埋める機能があるものを選定します。
- 種類: シーラー、フィラー、サーフェーサーなど。
- 中塗り(Naka-nuri)
- 役割: 塗膜に厚みを持たせ、本来の色を出します。
- 上塗り(Uwa-nuri)
- 役割: 仕上げ。中塗りと同じ塗料を使いますが、塗り残しを防ぐために中塗りと色を微妙に変える場合もあります。
- 【重要】塗布量(To-furyo):
- 各メーカーは「1㎡あたり何kg塗らなければならない」という基準塗布量を定めています。見積もりに「使用缶数」が記載されていると、希釈(薄めすぎ)のごまかしを見抜けます。

5. 付帯部塗装(Futai-bu)
壁以外の細かい部分です。ここを塗るか塗らないか、どのグレードで塗るかで金額と美観が大きく変わります。
- 軒天(Noki-ten): 屋根の裏側。湿気が溜まりやすいため、透湿性のある専用塗料を使います。
- 破風・鼻隠し(Hafu/Hanakakushi): 屋根の先端部分。劣化しやすい箇所です。
- 雨樋(Amadoi): 塩ビ製が多いため、目荒らし(ケレン)をしてから塗ります。
- 雨戸・戸袋: 吹き付け塗装やローラーで仕上げます。
- 水切り: 基礎と外壁の間の金属部分。

第3章:適正単価一覧(2025年最新相場)
地域や家の形状によりますが、以下の範囲内であれば適正と言えます。これより極端に安い、あるいは高い場合は理由を確認しましょう。
項目単位単価目安(円)
備考仮設足場㎡800 円~ 1,200円ビケ足場・飛散防止ネット込み
高圧洗浄㎡200円~ 300円バイオ洗浄は+200円~
養生費㎡300円 ~ 500円一式計上の場合もあり(塗装に含む場合も有り)
シーリング打ち替えm900円 ~ 1,500円高耐久材は高くなるシーリング増し打ちm600円~ 900円サッシ周りなど
外壁塗装(合計3回)㎡以下、塗料グレード別下塗り+中塗り+上塗り込み
・アクリル㎡1,400円~ 1,800円耐用年数が短いため現在は稀
・ウレタン㎡1,800円~ 2,200円柔らかく密着が良いが耐久性低め
・シリコン㎡2,500円 ~ 3,500円現在のスタンダード
・ラジカル制御形㎡3,000円 ~ 3,800円シリコンより耐久性が高い新定番
・フッ素㎡4,000円 ~ 5,000円高耐久、商業施設などで多用
・無機塗料㎡5,000円~ 6,500円最上級グレード、
超高耐久軒天塗装㎡1,000円 ~ 1,500円
破風・雨樋m1,000円~ 1,800円

第4章:危険な見積もりの見分け方
見積もりをチェックする際、以下のキーワードや記述があったら「赤信号」です。
1. 「一式(Isshiki)」が多すぎる
- NG例: 「塗装工事一式 100万円」
- 解説: 塗装面積(㎡)やメートル数(m)が書かれていない見積もりは論外です。後から「そこは含まれていない」と追加料金を請求されたり、塗る面積をごまかされたりするリスクがあります。
- 許容範囲: 「残材処理費 一式」「諸経費 一式」など、数量化できないものはOKです。

2. 塗装面積(数量)が大きすぎる
- 解説: 実際の壁面積よりも大きく見積もられていることがあります。
- チェック法: 延床面積(坪数)× 3.3 × 1.2 = 概算外壁面積
- 例:30坪の家の場合、30 × 3.3 × 1.2 ≒ 118.8㎡
- 窓の開口部(塗らない部分)をしっかり引いているか確認してください。係数1.2~1.3程度が目安ですが、係数1.5以上で計算されている場合は水増しの可能性があります。
3. 「足場代無料」キャンペーン
- 解説: 足場代(約15万〜25万円)を無料にすることは、通常不可能です。足場代を無料にすると見せかけて、その分を塗料代や工賃に上乗せしているか、手抜き工事をするかのどちらかです。
4. 塗料の商品名が不明確
- NG例: 「シリコン塗料」「自社オリジナル塗料」
- 解説: どこのメーカーの何という商品か(例:日本ペイントのパーフェクトトップ)が記載されていないと、定価や性能を調べようがありません。「オリジナル塗料」は、安い塗料のラベルを張り替えて高く売っているケースが多いため注意が必要です。
第5章:諸経費と消費税
見落としがちですが、トラブルになりやすい部分です。
- 現場管理費(Genba Kanri-hi):
- 現場監督が巡回するための費用、近隣挨拶の費用、工程管理費など。総額の5%〜10%程度が目安です。
- 廃材処理費:
- 使用済みの塗料缶や養生ゴミなどを産業廃棄物として処分する費用。
- 消費税:
- リフォーム工事は高額になるため、消費税10%の額も大きいです。「税込」か「税抜」かを必ず確認しましょう。
このように詳細な内訳を知ることは、あなたの家を守る「武器」になります。このガイドを参考に、納得のいく見積もりを見極めてください。






